เข้าสู่ระบบその日の真夜中―― 深い眠りに落ちていたヴィクトリアは、誰かの声を聞いた気がした。『ようやく会えるな』 ヴィクトリアはその声に導かれるように目を覚ました。すると、腹部に痛みがあることに気づく。痛みは等間隔でやって来ていた。 ついに陣痛が来たのかと思ったヴィクトリアは、ドキドキしながら隣で寝ていたリュージュを起こした。「何っ!」 陣痛が来たかもしれないと伝えると、リュージュはすぐに覚醒した。「よし! 医療棟に行くぞ!」「待って! 荷物! 入院用の荷物を持って行かないと!」「そうだった!」 ヴィクトリアを姫抱きにしてそのまま勇んで出立しようとするリュージュは、少し気が動転しているようだった。 リュージュはバッグを肩に担いでヴィクトリアを抱き上げると、急いで医療棟に向かった。「も、も、もうちょっとゆっくり走って!」 最初リュージュが全速力を出すものだから、ヴィクトリアは悲鳴を上げた。「わ、わわわ、わかってるっ! ごめんっ!」 自分と同じく出産への動揺継続中のリュージュと共にたどり着いた医療棟で、ヴィクトリアはそのまま丸一日陣痛に苦しむことになった。 ****** 与えられた部屋で痛みに耐え、そろそろ生まれるから息んでと言われる頃には、ヴィクトリアの体力は底を尽きかけていた。「ヴィクトリア! 頑張れ! ヴィクトリア!」 リュージュが手を握りそばで励ましてくれるが、何度息んでもお産が進んでいる気配はなく、長引く出産によって次第に意識が遠くなっていく。「……体……腰が……狭……」「……そんな! ……! ……! ヴィクトリア!」 朦朧とする意識の狭間で、リュージュと医師が何やら深刻そうな話をしているのが聞こえたが、内容まではよくわからない。 そのうちに
新居への引っ越しも終わり、夏になり、秋も過ぎ、ヴィクトリアはリュージュと幸せな日々を送った。 ただ、穏やかなその日々にも懸念事項はあった。 夜、リュージュと共に寝室に入ったヴィクトリアは、そのつもりでリュージュと抱擁しキスを交わした。 目立ってきたお腹に障らないように優しくベッドに横たえられると、ヴィクトリアの服の中にリュージュの手が忍び込んでくる。 ヴィクトリアはリュージュに愛撫される感覚にうっとりしながら身を任せていたが、突然、腹の中がウゴウゴと蠢き出し、またか、という思いに囚われた。「痛い…… 痛いわ……」 胎児が腹の中で暴れ出し、至る所を蹴られる。 あと数ヶ月で生まれるほどになったヴィクトリアの赤子は、胎児とは思えないほどに力が強く、腹を突き破って出くるんじゃないかと思う時もある。 腹の子は両親が仲よくしようとするのを邪魔したいのか、リュージュとよい雰囲気になると、毎回ではないがヴィクトリアの体内で殴る蹴るの大暴れをする。イチャイチャしたくても痛くてそれどころではなくなってくるのだ。 何もしてこない時はたぶん胎の中で寝てるのだと思う。「またか? 大丈夫か?」「痛っ!」 リュージュがヴィクトリアに声をかけて体に触れようとすると、みぞおちあたりに強烈な一撃が入って、ヴィクトリアは悶絶した。「リュージュ、ごめんね…… しばらく離れてて……」 リュージュと性的な触れ合いさえしなければ、赤子もそのうちに静かになる。 しかしリュージュはムッと眉を寄せ、ベッドに座るヴィクトリアの膨れた腹の前に顔を寄せた。「おいお前! ヴィクトリアは俺のだからな! お前の母さんだけど、でも俺の―― うわあっ!」 言葉の途中でヴィクトリアの腹が服の下がグニュンと動き、リュージュは寸前で避けたが、まるで先ほどまでリュージュの顔があった場所を殴ろうとするかのように、腹部が突き出た。「ううっ…… い、痛い……」「大丈夫か?」
ヴィクトリアはリュージュに連れられて、引っ越し先の候補であるという家の下見に向かっていた。 オニキスが新しい族長になることが決まり、数十年ぶりの族長交代の影響で現在里の中は色々とバタついている。そんな中でもリュージュがかなり頑張ってくれたらしく、現状で引っ越し可能な家を早々に確保してきてくれた。「てっきり、引っ越しはもう少し先になると思っていたわ」 手を繋いで歩きながらヴィクトリアは思ったことを口にする。「いつまでもあの家にいたら胎教によくないだろうって思って、急いだんだ」 まだ悪阻も始まっていないような初期であり、お腹もぺったんこだが、シドが死んだあの日の営みが実って、ヴィクトリアはリュージュの子供を妊娠していた。 リュージュはあの日からずっとそわそわしっぱなしで、毎日ヴィクトリアの匂いを嗅いで妊娠したかどうかを確認していた。 妊娠がわかった時にはリュージュは大喜びしてくれて、ヴィクトリアも笑顔になって二人で抱き合い、ヴィクトリアの体に新しい命が宿ったことを一緒に祝った。 それから、妊娠確定後しばらくして、毎日のように見ていたレインの夢を見なくなった。 あの夢は、「レインにいつか償わなければ」という自分の心の枷を反映させたもののように感じていたが、子供ができたことで意識が変わり、自分の中で覚悟が決まったのだと思った。 優先するべきはリュージュと子供であり、もし今レインが目の前に現れても、ヴィクトリアは大事な二人に我慢を強いるような行動は起こさない。「あの家だ」 やがて視線の先に一軒の家が見えてくる。その家を指差すリュージュを見たヴィクトリアは、はたと立ち止まった。「あれは……」 間違いない。その家は、ヴィクトリアの母であるオリヴィアが亡くなるまで、一緒に暮らしていた家だ。「あの家はお前が十一歳まで暮らしていた家だし、お前が住むならいいんじゃないかってオニキスに言われたんだ。 俺も一回下見したけど、八年前だからもう何の匂いも残ってない」
ベッドの上で、裸になった二人が絡み合う。「もうっ…… いいからぁっ…… 挿れてっ……」 リュージュはずっとヴィクトリアの全身への愛撫を続けるばかりで、なかなか結合してくれなかった。 リュージュがヴィクトリアの股の間に男根を当ててきても、割れ目やクリトリスを擦り立てるだけで、一番欲しい場所にはもらえない。 「ああ、そうだな……」 ヴィクトリアの懇願を受けたリュージュは、彼女の胸の先端から唇を離して了承したようなことを言うが、すぐにまたピンと勃った胸の先をねぶり始めて、膣に挿入している指を動かし、赤く色づいて膨らんだ淫芽を虐めてくる。「愛してるよ、ヴィクトリア」「ああ! ああーーっ!」 リュージュに愛を囁かれて胸がいっぱいになったヴィクトリアは、それだけで腰をカクカク揺らしながら、本日何度目かわからない絶頂を果たした。 絶頂から降りてきて激しく呼吸を繰り返すヴィクトリアの耳に、リュージュが膣から指を引き抜くクチャッという音が聞こえた。 下を見れば、脱力しているヴィクトリアの股間に唇を近づけようとするリュージュがいた。 この絶頂地獄はどこまで続くのだろうと思ったヴィクトリアは、今度は泣きながら懇願した。「挿れてぇっ! 早く突いてっ! 奥まで埋めてぇっ!」 恥ずかしいという感情は既に消え去っていて、ヴィクトリアは自分の手で秘裂を開くと、リュージュの目前にすべてを曝け出した。「……本当にいいか? 今日ヤったら子どもができるぞ」 クンニを直前で止めたリュージュは、行為前にも確認したことを再びたずねて来た。 もしかしたらリュージュも、本当は子供を作ることに少しためらいがあるのかもしれない。「いいの! 欲しいの! 赤ちゃんください!」「わかった。いくぞ」 決意したのだろうリュージュはそう言うと、ヴィクトリアの脚の間に体を滑り込ませた。 リュージュはヴィクトリアが広げたままの膣口に先
「お前、やっぱり…… レイン――」「そんなことないわ!」 リュージュの口から「レイン」の名前が出た途端、ヴィクトリアは話を遮るようにすかさず口を開いた。「私が愛してるのはリュージュだけよ! リュージュ以外の人には、抱きしめられるのもキスされるのも無理だったもの!」「無理だった、なんて、経験してきたような口振りだな?」 リュージュがいぶかしげな表情で言うのを受けて、ヴィクトリアは動悸を感じた。(今日のリュージュは冴えてるわね!) 夢の中に現れたレインは怖い顔をしていて、なのに、ヴィクトリアを抱きしめてキスしようとしてきた。「ゆ、夢の中の話よ? 夢の中でレインが襲いかかってきて、抱きついてキスしようとしてきたけど、腕を振り払ってすぐに逃げたから、何もされてないわ」 そしてその後追いかけっこが始まったが、撒いてやった。夢の中の話だが。「お前がレインじゃなくて俺を一番に愛してくれているのはわかってるよ。 実はさっきお前に『愛してる』って言われるまでは、もしかしたら『番の呪い』が解けてないんじゃないかって、心配になってたけど…… なあ、一番最初に俺と体を繋げた時に、頭の中で『カチカチカチ』って音がしなかったか?」「そういえば…… そんな音がしていたわ」 ヴィクトリアの答えを聞いたリュージュはうなずいた。「俺にも鳴ったよ。その音は番を得た時に自分の頭の中だけで鳴るらしい。相手と番になったことを示す印みたいなもんだ。 でも、中には体を繋げても音がしないこともあるって聞いたことがあったから、ちょっと心配になってた」「そうなのね……」 母を思春期前に亡くして、里の交友関係も狭かったヴィクトリアは、そんな話は誰からも聞いたことがなかったし、本で読んだこともなかった。 ヴィクトリアはふと、『番になる音』が鳴る前に、ガラスが割れるような音を聞いていたことも思い出した。(もしか
脱衣所でリュージュに体や髪の毛を拭いてもらう。 振動が伝わりプルプル揺れる乳房をリュージュが食い入るように見ていたので、揉まれたり食べられたりするのだろうかと思ったが、タオル越しに触れる以外でリュージュが何かをしてくることはなかった。 リュージュは服が濡れてしまったので自分も風呂に入ると言い、浴室に消えていった。ヴィクトリアは脱衣所にリュージュがあらかじめ置いていた服に着替えた後、リビングに向かった。 リュージュが作ってくれた鍋料理を台所に持ち込んで温め直す。お腹はペコペコだったが、リュージュが来てから一緒に食べようと思った。 鍋の火を止め、ソファに座って休憩していると、それほど時間も置かずにリュージュが現れた。「なんだ、先に食べていてよかったのに」「一緒に食べたかったの。それに臨時集会のことも気になるし、食べながら話を聞こうかなって思って。リュージュの話って集会のことよね?」「えーっと…… まあ、それもある……」 リュージュの返事はどこか歯切れが悪かったが、ヴィクトリアが肉料理を皿に盛りつけようとすると、リュージュもそばに寄って来て、二人で仲よく食事の準備をした。 ****** リュージュによれば、やはりシドの処刑は予定通り執行されたそうだ。 そのことを聞いた瞬間にヴィクトリアは目を伏せてポロポロと涙を流した。 相向かいに座っていたリュージュは食事を止めて席を立つと、「大丈夫か」とヴィクトリアを抱きしめて、落ち着くまでそのままでいてくれた。 リュージュは涙こそ出さなかったが、ヴィクトリアに感化された様子で、少し目が赤くなっていた。 酷い父親だったが、リュージュにとっては実父であり、悼む気持ちはあるのだろう。「しょうがないよ。あいつは、それだけのことをしてきたんだから」 ヴィクトリアがひとしきり泣き、落ち着きを取り戻した頃に、リュージュが冷めてしまった料理を小鍋を使って温め直してくれた。食事を再
少し時間を置いて、ヴィクトリアは館に戻った。周囲にシドの気配がないことを確認してから、一階の共同部屋へ立ち寄る。 共同部屋は館の住人ならば誰でも利用可能な広々とした部屋だ。その一角に布で幕が作られていた。 (誰かが泣いてる……) 「ほら、男の子が泣かないのよ」 優しく語りかける声も聞こえてきた。 近づくと、半分ほどしか閉まっていない幕の間から、濃い青色の髪を片側に編み込んだ十代後半ほどの女性が背を向け、ベッドに向かっているのが見えた。 薬師のサーシャだ。腰の辺りにリボンのついた薄紅色のワンピースと白いエプロンを身につけている。サーシャは、ベッドの上で上半身を起こした少年の
ヴィクトリアは十四歳になった。 里は人間があまり寄りつかないよう、深い森の中を切り拓いた場所にある。 ヴィクトリアは里の端にある牧場近くの木陰に座り、本を読んでいた。傍らには他にも数冊置いてある。商人から買ったものだ。 ヴィクトリアはシドの住むレンガ造りの大きな族長の館に一部屋与えられてそこに住んでいた。シドのお手付きになった女たちも同様に一室与えられ、館の中でハーレムが形成されている。 館から外に出ていても、里の中にいるならばシドも追いかけて来ないので、気分転換に外で本を読んでいた。ばったり出くわすと捕まることもあるので、できるだけシドの視界には入らないように気をつけている
母のように軟禁状態にされるのかと思ったが、そうはならなかった。けれど、遊び相手は制限されるようになった。 とにかく男の近くに寄るな触るなしゃべるなと言われた。「相手が子供だろうと男はダメだ」と。シドはお手付きにする女が多かったので、ヴィクトリア以外にも子供は複数いたが、兄弟ですらその対象だった。 そうなるとつき合う相手は女性のみとなるが、それはそれで問題ありだった。 人間の商人が時折物を売りに来るのだが、シドは宝石などの装飾品や衣服など一番質の良いものをヴィクトリアに買い与えようとする。 いらないと言うと睨まれるので、商人が来るたびに一つか二つ買ってもらっていたが、他の子は毎
ヴィクトリアの幼い頃の記憶は、母に関するもので占められていた。 母は獣人で、とても綺麗な人だった。二人目の子が難産のうえ死産してしまい、そのせいで病弱になったと聞いていたけど、無関心な父――シド――と違い、優しくていつもヴィクトリアを気にかけてくれた。 『早く、逃げなさい』 それが母の口癖だった。母は鉄格子の窓と鍵が幾つも設置された部屋に閉じ込められて、シドが付き添う以外は外に出してもらえなかった。自分自身が自由になりたい願望もあったのかもしれないが、ことあるごとにヴィクトリアにそう語っていた。 ヴィクトリアはシドが母を絶対に逃さないだろうことをなんとなく感じていた。母を置いて







